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Ship John Stories  Volume:02

My Favorite Knives. 〜愛用する「スタンレー299」

質実剛健なモノづくりに定評のあるシップジョン。ブランドを率いるマイク・イライアスのハンドクラフトは独学で技を磨き上げ培ったもの。だから道具選びにも並々ならぬ審美眼がある。

今回は創業当時から愛用するクラフトマン・ギアについて──。

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Mike Elias / マイク・イライアス

全米をワーゲンバスで旅した後、多くのインスピレーションを受けたオレゴン州ポートランドに移住。独学でパターンメイキングを学び、2006年にSHIP JOHNを創業。ブランドの名称は、マイクのホームタウンであるアメリカ・ニュージャージー州に旧くからある、美しい灯台の名から取られている。

 私がスタンレー299を愛用するようになったのは、何かを製作するうえで必要に迫られてのことでした。私のレザーワークはすべて独学で行われ、正式なトレーニングもなく、とにかく色々と試してみるしかありませんでした。わずかな資金で会社を立ち上げた為、レザーツールに高品質なものを求めると非常に高価だったので、私の初期の学習は、エステートセールやヤードセールで偶然見つけたツールを使って費やされました。

 スタンレー299もその一つです。ドライウォールなどの建築に使う一般的なカッターナイフです。革に夢中になった当初は、厚いベジタブルタンニンなめしの革を切るために、身近にあったこのナイフを手に取っていました。そして革細工が上達し、より複雑なデザインを作るようになると、スタンレー299で革をカットする技術も同じ様に向上しました。

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1843年に米国で誕生したスタンレーはプロフェッショナルのための道具を提供するツールブランド。スタンレー299は交換可能なブレードをボディに固定するインターロッキングノーズが特徴で、滑りにくいグリップを備えた機能的なデザインを有する

 このナイフを使う最大の理由は、手になじむこと、そして交換可能なブレードが頑丈に装着されていることです。正確に革をカットするために私はこのナイフを鉛筆のように持っています。手の位置とブレードの形状により、長くまっすぐなカットではブレードの角度を下げてナイフを安定させ、カーブではブレードを持ち上げて刃が素材に当たる面積を少なくすることができるのです。このナイフは私にとって完璧に機能し、筋肉の記憶とともに、ほとんど手の延長のようになりました。

 他の多くのユーティリティナイフと比較しても、299は最も優れた機能を備えています。ひと回り大きなモデルである199は、刃をそれほどしっかりと保持できないので、299の代替品とはなりません。また巻き取り式のカッターナイフも、この種の工作には向いていません。ヘッドナイフ、日本式革包丁、英国式革包丁と、あらゆるものを試してきましたが、私は結局全てこの299に帰結します。

 

 だから、この小さくて美しいツールは、革を手で切るための最も信頼出来るナイフになりました。ささやかなスタートだったこのブランドを育ててきた象徴として、何年経っても愛用しています。他にも革専用の道具はたくさんありますが、このナイフは私たちのショップのためのナイフなのです。

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本来はドライウォールや段ボールなどの工作に使うナイフだが、握りやすい形状に加え非常に耐久性に優れる構造、そして切る力を調節しやすい固定刃のデザインはマルチに使うことができる

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