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Ship John Stories  Volume: 11

New Horizons in Design   シップ・ジョンに於けるモノづくりへの情熱

クラフトマンでありデザイナーであるマイク・イライアス。シップ・ジョンに於けるモノづくりの美学は、

彼が幼少期の体験から現在に至るまで変わることはない。今号ではシップ・ジョンの新しいプロジェクトの始動と共に、彼のモノ作りの情熱を綴る──。

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Mike Elias / マイク・イライアス

全米をワーゲンバスで旅した後、多くのインスピレーションを受けたオレゴン州ポートランドに移住。独学でパターンメイキングを学び、2006 年にシップジョンを創業。ブランドの名称はマイクのホームタウンであるアメリカ・ニュージャージー州に旧くからある、美しい灯台の名前から取られている。

またマイク本人が活動を行うバンド「Denver」は、apple music, youtube musicでも視聴可能。

 私はいつも何かをいじっている子供だった。

 

 ニュージャージー州の森と海で育った私は、あらゆるものを修理したり、組み立てたり、スクラップしたり、分解したり、また組み立て直したりすることをそこで学びました。森の中の砦や静かな脇道にあるスケート・ランプ、旧い物置をあさっては、何を思いつくかということに夢中になっていたのです。私が育った町や時代には、旧いものを捨てて新しいものを手に入れるのとは対照的に、旧いものを活かすコツと環境が確かにありました。このことは、大人になってからもずっと私の中に植えつけられています。

 

 シップ・ジョンは、自らが所有していて自由に使える道具の中から、美しいものを作り出すという考えの上に成り立っていました。そこでは必ずしも革の仕事用でない道具が、仕事のある部分では必需品として私の常備品となりました。現在のパラメーターの範囲内で作らざるを得なくなったとき、予想もしなかった素晴らしいことが起こるかもしれない……、例えばシンプルな木工所でも、高価な道具を全て揃えた店よりも美しくデザインされたアイテムを生み出すことが出来るように、モノ作りは頭、心、そして手から生まれるものなのです。良い道具は絶対的な喜びであり、ある領域では全てを変えることができますが、強いアイデアとデザインから始めなければ、その道具はまったく役に立ちません。

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マイク・イライアスが9〜10歳の頃にウサギをハンティングした際に撮った写真(上)。当時飼っていたビーグル犬のRagsと一緒に狩りに行っていたそうだ。

​アックス(斧)の持ち手木材部分の先端を削り込んでスカルをデザイン。マイクのモノづくりの熱量を垣間見れる作品だ。(写真右)

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 言うまでもなく、衣服は私達の生活に欠かせないものです。シップ・ジョンでは、設立当初から衣服やその他の着用可能なアクセサリーに重点を置いてきました。それは私が本当に楽しんでいるデザインの一部であり、同様にそれを楽しんでくれている顧客に恵まれたことに感謝しています。私たちは常に新しいアイデアと、長持ちするもの、信頼できるものを作る方法を考えています。洋服が私たちの中心であることに変わりはないのですが、痒いところに手が届くような自分の制約を超えたデザイン──作る、造る、創造するということへの限界を押し広げるような──そんな心の欲望を抑えることはできません。

 

 何年もかけて学んだことのひとつは、何かを実現するためにあらゆるツールを所有する必要はないということです。人生と呼ばれるこのクレイジーな道のりで多くの人々と出会い、時にはヒッチハイクをし、時には自分のクルマを貸し出す。完全に理解しているわけではない世界で自分の考えを結びつけ、伝えることにはそれなりの学習曲線を伴いますが、新しいことを学ぶ興奮は私にとってガソリンタンクの燃料となるのです。

 

 デザインをするための最良の方法は、自分の人生や好きなことを見つめ直し、その中に少しでも改善出来るものがないかどうかを考えることだと私は信じています。最近、私は《SJ Record Club》というシップ・ジョンの新しいプロジェクトをスタートさせました。これは、レコードで音楽を聴くことへの私の愛から生まれたものです。審美的にも機械的にも、リスニング体験を向上させる幅広い音楽関連グッズに少しずつ取り組んでいます。

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レコードウエイト/45アダプター

シップ・ジョンが新たに始動させたプロジェクト《SJ RECORD CLUB》からリリースの​レコードウエイト/45アダプター。高精度な加工で真鍮を削り出した一級品。手掛けたのはモノづくりの街、東大阪に拠点を置く「OKAMOTO ss」。

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マイク・イライアスのアイデアを具現化。ウエイトと45アダプターは分割型となっており、それぞれを組み合わせ・分解して使用する特殊な形状となっている。これによって、45アダプターを使いながらウエイトを乗せることが可能。

​また、2/100mmほどの高精度なクリアランスを実現しており、ウエイトと45アダプターをしっかりと組み合わせることができる。持ち手の美しい曲線にも注目したい。

 ターンテーブルと一緒に使う美しいアクセサリーとして、日本の友人であるオカモトと新しいレコードウエイト/ 45アダプターを開発しています。レコードウエイトはターンテーブルがよりスムーズに一定の回転で動作し、小さな歪や振動の中に存在する「wow and flutter」を軽減するのに役立ちます。このアイテムが特別なデザインとなっているのは、12インチと7インチのレコードに使用できるウエイトと、45アダプターを組み合わせることが可能な点です。

 

 当社のSJSN4 Cutterを製造した「OKAMOTO ss」の熟練した技術は、きっとあなたのハイエンド・ステレオ・システムのための高品質で精密な機器を作り出してくれるでしょう。私はこれを世に送り出すことをとても楽しみにしています。

 

 ウエイトに加え、他のいくつかのパーツも現在製作中です。アメリカの友人、Trevor Kellyと一緒に“Now Playing” のレコード・ホルダーとそれに合う美しいシェルフのデザインを仕上げているところです。これらはオレゴン産のホワイトオーク材と無垢の真鍮で製作され、シップ・ジョンの長年の美学を踏襲しています。

 

 近日、私たちのデザインにおける新たな冒険のいくつかを皆さんと分かち合えることをとても楽しみにしています。

                                                                                              Mike Elias

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